メイン画像

2019年 全日本吹奏楽コンクール課題曲 楽曲別推奨楽器のご紹介。~課題曲Ⅰ「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 打楽器奏者の平尾信幸氏監修による、

2019年 全日本吹奏楽コンクール課題曲 楽曲別・推奨楽器のご紹介です。

 

課題曲Ⅰ「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲

 

 

「あんたがたどこさ」という日本人なら誰でも知っているわらべ歌と、曲中散りばめられたウッドブロックやボンゴのせいで、牧歌的な軽めのファンタジーととるのは間違いです。

モートングールド、コルンゴルト、ポールクレストンなど、20世紀アメリカを代表し吹奏楽の世界にも多大なる貢献をした作曲家たちの作品にも匹敵する骨太な作品です。

小物パーカッションによる和風な彩付けに対して、小太鼓、大太鼓、シンバルの基本セクションは20世紀(特に1950~1970年代)の典型的なアメリカのミリタリーバンドスタイルを基調にして良いかと思います。モートングールドの「アメリカンサリュート」などは代表的作品だと思います。

 

☆スネアドラム

いきなりですがスネアドラムをラーメンにたとえてみましょうか。現在、豚骨、激辛、味噌、醤油。ご当地ラーメンや新作・多国籍風のラーメン等、多岐にわたっていますね。でもルーツは“支那そば”“中華そば”と呼ばれる透き通った鶏がらスープのしょうゆ味で支那ちく、メンマ、ネギ、叉焼…(私は親子4代横浜生まれで横浜育ちですが“横浜家系”なんか子供のころ無かった)。中華そば系の名店のファンはもうその味以外譲れないといいます。この課題曲Ⅰのスネアドラムもそんな事が言えると思います。特にⒺ2小節前やⓂ2小節前のフレーズなどで、この定番サウンドは譲れないかも(笑)。ではラーメンのルーツと言われる極上中華そば的楽器をチョイスしてみましょう。

“14㌅×5㌅でブラスかスチールの胴で響き線はスチールのコイル”これが世界基準の定番中の定番でした。Pearlのラインナップだとまずスタンダードスチール(SS1455)。ラーメンにたとえると高級インスタントラーメン的(今どきのカップ麺のクォリティーは皆さんご存知のようにバカにできない)なカジュアルですが人気の楽器です。それで、ここからは世界的に人気を誇る本格中華的楽器となります。ユニバーサルスチール(US1450、パールドラムカタログを参照)はPearlメタルスネアの超定番モデル。ロックドラマーにも人気の非常にオープンでパワフルなサウンドが特徴。続いて、あらゆるサウンドの要素をグレードアップさせたのがSensiTone シリーズ。ここでは5㌅深のSTA1450BR(ブラスシェル)、STA1450S(スチールシェル)をお薦めします。私の感覚だとやや高めのピッチにチューニングしたスチールシェルが気持ちいいかも。そして、一番の御薦めは、これらメタルシェルの良さと伝統を残しつつ、単板メイプルのもつ品の良いサウンドと圧倒的繊細さを併せ持つ名器“カスタムクラシック”です(CL1455SN/C。ここでは5.5㌅深のをお薦め)。センター付近でもリム近くでも繊細に反応するレスポンス。幅広いダイナミクスに対応するナチュラルで適度なレゾナンスなどが、コンクールという特別な舞台上での究極に練り上げられ極限まで磨かれてきたバンドのパフォーマンスに相応しい楽器だと思います。ぜひミュートせずに(するとしても最小限で…)快適で感動的なプレーを楽しんで欲しいと思います。

 

☆バスドラム

スネア同様バスドラムにもミリタリーバンドの定番サイズがありました。36㌅×18㌅です。

ここではフィルハーモニック・シリーズ“STモデル”(PBA3618ST)をお薦めします。骨太でややダークでソリッドなサウンドが生み出す力強いビート(ⒸⒺⓀⓂ等)は、この曲の生命線である推進力をより効果的に、魅力的に表現するのに適していると思います。

 

☆サスペンドシンバル

冒頭3小節と前半、後半の速い部分は、立ち上がりの反応が良いアーティザンを、中間部は、粘りがありゆったりした反応と幅広いダイナミクスのHHをお薦めします。アーティザンの繊細なスプラッシュ音は、山里にかかる朝靄を感じるかのようなイマジネーション掻き立てるサウンドになるでしょう。また中間部ですが、編成が大きくパワフルな上級バンドにはHH-20Sがお薦め。セイビアン・シンバルマレット“クレッシェンド”(SAB-61125)とともにどうぞ。HHのレイジング(音溝)はⒿ1小節まえのようなスクラッチ奏法にも適しています。

 

☆ウッドブロック&ボンゴ

この曲をそこはかとなく和風に装飾する重要な役割のあるウッドブロックとボンゴは、それぞれ分けて考えずに一つのパートと考えて密なアンサンブルが求められます。

コントロールが効かず必要以上の過度な音量や派手すぎる音色になると、美空ひばりの「リンゴ追分」などの昭和歌謡や日本昔話のBGMのような取って付けたようなコテコテの和風テイストになってしまい、この曲の本質から離れてしまう恐れもあります。

また、木製自鳴楽器のウッドブロック、膜鳴楽器のボンゴはそれぞれまったく性格のちがう楽器であるのにもかかわらず、サイズやチューニング、マレットの選び方によっては、音色が極似し、かぶってしまうことがあります。細心の注意が必要です。梅雨時期、夏季の練習場所の環境によってボンゴの本革の状態やピッチを安定的にキープすることが難しいと思われる場合は、ニュースキンヘッド仕様のホワイトボンゴ(BG-209WR)をお薦めします。また、ボンゴ、ウッドブロックの音色の変化をさらに明確に分けるためにクラーベブロック(PBL-10.20.30)アッシュトーンブロック(PAB-20,50,100)も視野にいれるのもお薦めします。