Vol.11「タファネルとゴーベール」

早いもので、四谷区民ホールでの「タファネルとゴーベールの遺産Vol.2」の
リサイタルが終わって、1ヶ月たってしまいました。

ご来場いただいた皆様方には本当に感謝いたします。
どうもありがとうございました。
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「タファネルとゴーベール日課大練習」の教本をご存知の方は
多いと思いますが、作曲家としてのポール・タファネルと
フィリップ・ゴーベールの評価はもっとされて良いと思います。
これぞフランスのエスプリと言うエキスが詰まった
大変素晴らしい曲が多く、演奏される機会が少ないのはもったいない。
そもそもタファネル自身がバッハのフルートソナタ等を発掘し、
現在のフルートリサイタルの重要なレパートリーにした訳で、
その功績は偉大なものであります。今年タファネル没後100年の
機会にこのような催しが出来て良かったと思っています。

また、4年前にやった「タファネルとゴーベールの遺産Vol.1」の
CDが発売になりました。

コンサートのライブ録音なのでミスもあり恥ずかしい仕上がりですが、
是非この名曲群をフルートの大切なレパートリーとして
皆さんに知ってもらい、演奏する機会を増やして行きたいと思います。
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ところで、リサイタルの後、いろいろな先生方とお話をして、
パリでのある事件を思い出したので記憶をたどりながら書いていきます。

パリの各区には其々「ミュニシパル」(municipal)(市町村と言う意味)の
音楽院があり、すべての区の音楽院の合同の試験があります。
レイモン・ギオー先生のクラスはその中の10区の音楽院でありました。
僕はもうギオークラスを出ていましたので、多分1989年。
そのパリ・ミュニシパル音楽院卒業試験の事。
試験曲はゴーベールの「ファンタジー」でした。

審査員に故モーリス・プリュヴォ氏がいました。
氏はパリ管弦楽団のピッコロ奏者で、いつもパリ管のコンサートを聴きに行くと、
そのピッコロの素晴らしさに感動したものでした。
デボスト氏に背を向けるように座り飄々と吹くその姿は
今でも目に焼きついています。機会があって僕も1度だけお亡くなりになる前に
レッスンを受けた事があります。体調の悪い様子でしたが、
優しくニコニコとレッスンしてくれました。
そのプリュヴォ氏はゴーベールの弟子でもあります。
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その当時のギオークラスの生徒達は「セピア色のパリVol.7」でも書きましたが
外国人が多く、皆非常に優秀でギオー先生も生徒達をとても可愛がっていました。
試験は公開だったので僕は仲間達の演奏を聴きに行ったのですが、
歌心旺盛で演奏は完璧。其々の個性も楽しく感心して聴きました。

ところが審査員のプリュボ氏が「彼らのゴーベールはイタリアオペラだ!」と言って
ことごとくギオー先生の生徒達の点数を低く付けてしまったのです。
予想外の結果にギオー先生は激怒!
「まず演奏にミスがなければ低い点をつける理由がない!
音や音楽性は個々の好みの問題だ!」

そして「ウチのクラスだけで追試をやる」と言ってあちこちに
電話をかけまくり集めた審査員が、
アラン・マリオン氏(パリ音楽院教授)
ミッシェル・デボスト氏(パリ音楽院教授・パリ管首席)
クリスチャン・ラルデ氏(ソリスト・エコールノルマル教授)
イダ・リベラ女史(ムードン音楽院教授)と言う凄いメンバー!!!

ギオー氏が本気を出せばこんな国際コンクールの審査員のようなメンバーを
簡単にそろえる事が出来たのです。これも公開だったので、
もちろん聴きに行ったのですが、追試当日は和気藹々。いつも紳士なラルデ氏。
テンションの高いリベラ女史。マリオンとデボストは仲が悪いって噂だったけど??
楽しそうに会話していました。ギオー先生は可愛い生徒のため、
自分の名誉のために頑張ったのでした。

生徒達も審査員の顔ぶれにビビることなく、
伸び伸びと実力を発揮した素晴らしい試験でした。
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その時はプリュヴォ氏の振る舞いに、少し憤りのような気持ちを感じたのですが、
今から考えるとそうでもないような気もします。
一方「演奏にミスがなければ・・・・」と言うギオー先生の意見も正しい。
ゴーベールの音楽の繊細さはフランスのエスプリ。コンクール等で聴かされる、
押し付けがましい、ハッタリのような演奏とはかけ離れたものがあります。

なんと言っても、プリュヴォ氏はゴーベールに直接習ったのですからね。
でも、それも好みの問題。良い悪いではないのかも知れません。
フランス人同士でも論争になるほど、フランスにも色々な演奏家がいると言うことです。

今から思うとこのような事件があったので、未だに自分が
タファネルやゴーベールの作品に関してより深い気持ちを感じ、
真剣に取り組もうと追求し続けているのだと思います。
ギオー先生は75歳を超えた今でも精力的にレッスンをされていて、
ベリオやジョリヴェを完璧に吹かれるそうです。

有難い事に、そのギオー先生が「タファネルとゴーベールの遺産Vol.1」のCDに
推薦のお言葉を書いてくれました。感謝・・・・・。