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2020年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲 フルートパート徹底解説【Ⅳ】吹奏楽のための「幻想曲」 解説:神田 寛明

2020年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲 フルートパート徹底解説!

課題曲Ⅴ 吹奏楽のための「幻想曲」-アルノルト・シェーンベルク讃(高大職一のみ)

解説:神田 寛明   NHK交響楽団首席奏者 桐朋学園大学教授 THE FLUTE QUARTET

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楽譜を眺めても、参考音源を聴いても、この作品は「親しみやすい」とは感じられないかもしれません。この様な複雑な作品を練習する際にはスコアを常に手元に置いておきましょう。パート譜には作品の一部分しか印刷されていませんので、全体の設計図である「スコア」で各楽器の役割や関係性、和声やリズムなどを確認する必要があります(作曲者も前書きで同じようなことを述べています。このような前書きや注釈、特殊奏法などの説明も、パート譜には記されていないことが多いです)。

ではスコアをどのように見ればいいのか?を中心に、その他注意すべき点を具体的に解説していきます。

 

・縦の関係

2小節目(譜例1)の4拍目はFl.1は3連符、Fl.2は32分音符でリズムが異なります。そして最後の音(D)は、すべての木管楽器が同じタイミングで揃います。この様な細かい事はあらかじめスコアで確認をしておきましょう。もし知らずに吹くと「Fl.1とFl.2のリズムを合わせる」という、誤解に基づく間違いをするかもしれません。

また、Fl.1の最初の音(Es)は、先行するCl.1のF(実音Es)と同じタイミングです。このこともあらかじめ確認しておきます。お互いに正確なタイミングを心がけますが、演奏ではクラリネットに合わせます。

 

練習番号3番から2小節間(譜例2)は難所です。1小節目、Fl.1は8つ振り(慣れたら4つ振り)で正確に練習します。上手くいかないときはタイを外して練習しましょう。Piccoloの5連符はやりにくいリズムですが、5文字の言葉(イケブグロ、ライネッケ、など)を呪文の様に唱える練習も効果的です。Piccoloは「フリー」に吹いた方が上手くいくでしょう。PiccoloはFl.1などの他のパートと常にずれています。まずPiccoloとFl.1だけで練習を重ね、その後でFl.2とOb.1を加える「分奏」の時間を多く取りましょう。ただ、このリズムを楽譜通りに再現することは非常に困難に思えます。

 

・受け継ぎ

8小節目(譜例3)からの受け継ぎは、Fl.2はが最初「1 player」で始まり、9小節目4拍目の裏から「all」の指示があります。このタイミングはFl.1と同じですが、音量とその変化は異なります。Fl.1はアクセント付きのf後、指示はありませんが dim.します。その間 Fl.2がpから cresc.するように書かれていますが、これはパートが交代することによる「音色の変化」を「なめらかに」行われることを意図しているのでしょう。Fl.1はソリスティックな鋭い音色を、Fl.2「all」は柔らかい音色で、その「つなぎ目」が目立たないように音程と音色に注意します。

スコアの通りに演奏するだけでなく、作曲者の意図まで考えることが大切です。

 

・同一モティーフの差違

練習番号6番と8番以降の「前打音付きモティーフ」は、伸ばしている音の長さ(音価)が異なります。意外とこういう違いは見落としがちです。フルート以外にも同一モティーフを演奏している楽器があるか、スコアで確認しましょう。

なお、このモティーフは前打音を前に出し、アクセントの付いている4分音符のタイミングを拍に合わせます。伸ばす長さは、練習番号6番は少し短く、練習番号8番以降は次の拍(3拍目、1拍目)のアタマで切ります。

 

・フラッタータンギング

練習番号2番と8番の後4小節目に「flt.」の指示があります。これは「フラッタータンギング」という奏法で、いわゆる「巻き舌」です(他に喉を使うフラッター奏法もあります)。

通常のタンギングよりも舌の先端を少し立てた状態にして、上の前歯付け根の内側の歯茎を軽くはじくようにする「イタリア語のrの発音」を連続させます。舌全体(特に舌の根本から喉にかけて)を充分に脱力させます。

練習は自分の一番出しやすい音域で、まずfで行います。最初は長く伸ばせないかもしれません。fで上手くいかなければ少し弱くしたり、音を変えたりなど、あらゆる方法を試してください。フルートを持っていないときでも練習できます。