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2019年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲 課題曲Ⅴ ビスマス・サイケデリアⅠ 解説:白水 裕憲 (群馬交響楽団 フルート奏者)

2019年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲

課題曲Ⅴ ビスマス・サイケデリアⅠ

フルートパート<徹底解説>

解説:白水 裕憲  Hironori Shirouzu

(群馬交響楽団 フルート奏者)

この曲は、大変めずらしいモチーフを、精密な音列、拍子、リズム、和音、音量のバランス等によって表現しようという、若い学生さんにとっては取り組みがいのある作品だと思います。抽象的な音楽の表現力より、読譜の正確さ、精度の高い演奏を求めあう集中力と緊張感の共有、そして色彩に対する想像力を必要とします。

 

さて、ビスマスとは何か?調べてみると、結晶の美しさで有名な金属(鉱石)で、虹色に光る幾何学模様を見せるそうです。これはビスマス本来の色ではなく、表面の酸化膜で光が干渉することによる構造色だそうです。それによってもたらされる心理的感覚や幻覚、極彩色の渦巻くイメージが、サイケデリアという言葉に表されています(Wikipediaより引用)。話が難しくなってきましたが、こういう事を理解した上で演奏する事が求められます。

 

では、楽譜を見ていきましょう。冒頭のG(ソ)とDes(レ♭)の和音はフォルテッシモでアクセントが付いています。爆発的に強烈なハーモニー、それもかなり正確なピッチで吹く事を要求されています。しかし、フルートという楽器は、特にこの3オクターブ目のGの音を強く吹きすぎると、音程のコントロールが出来なくなってしまいます。

 

だからと言って、チューナーを見ながらそれに合わせて、頭部管を抜きすぎてしまうと、次に出て来るmpやp、pp.で音程がぶら下がってしまいます。ですから、チューニングする際は常に、mfからmpで吹いて全音域ある程度バランス良く吹ける程度に抜いておく事が肝要(かんよう)です。

 

それなら、この和音はどう吹けば良いのか?これは、永遠に悩みの種です。皆さんなら、どうしますか?そうですねえ、実はこの音域は強く吹かなくてもフルートは聴こえます。ですから、あまり強く吹かない方が良いです。と言うと、驚きますよね。先生に「フルート、もっと強く、もっと大きく」と、叱られかねません。でも仕方ないのです。そういう楽器ですから。と言っても、何とかしなくてはなりません。ではどうするか?

 

ここだけの話しですが、プロの人は上手にごまかします。強く吹いている様に見える、そして聴こえる様に吹くのです。そうです、魔法をかける、いやいや、魔法の様な吹き方を考えるのです。頭にアクセントが付いていましたね。これを利用して、鋭いタンギングで出て下さい。強すぎなくて大丈夫です。ただハッキリ固く吹くだけでffに聴こえます。トゥーのトゥの瞬間だけ大きく、一瞬ですから音程は気にしなくても大丈夫です。あとはすぐ音を小さくして、他の楽器のffのハーモニー上に薄く乗っかります。ビブラートは禁物です。最高音域ですから真っすぐ伸ばし続けていれば聴こえます。人間の耳というのは、音の立ち上がりの瞬間にいろいろな判断をしますから、中低音楽器が十分な音量で伸ばしてくれていたら、これでffの壮大なハーモニーで始まった様に聴こえます。でも、訓練はかなり必要です。

 

次にピッコロです。練習番号「A」の小さな音符は、音程を気にする必要はありません。まず、Fis(ファ♯)DEs (レ♭)F(ファ)の4つの音をスラーで出来るだけ早く吹く練習をして下さい。F(ファ)に向かって勢いよくハッキリ吹けたら、ダブルタンギングでE(ミ)C(ド)の2つの音を軽く足します。大変に目立つ難しい音域ですから、音を6つ並べるだけで、書いてある表情は出ます。F(ファ)の音が3小節目の一拍目にピッタリ合うように、狙いを定めて勇気を持って吹きましょう。

 

4小節目に、フラッターツンゲ(フラッター)が出て来ます。これは、息を出しながら、巻き舌のように”r-r-r-r-r-r “と発音します。実際は、音の出だしを明確にするために通常のタンギングを行うので “t-r-r-r-r-r “のようになります。(Wikipediaより引用)

難しければ”r-r-r-r-r-r “だけでも構いません。

このあとも、ピッコロは1人で独自のリズムで出てくるので、スコアを見てよく把握して、勇気を持って吹いて下さい。かなり重要です。

 

5小節目からフルートが16部音符で出て来ます。こちらは、他の楽器と少しずつズレて繋がりますから、精密機械のような正確さが求められます。ひとつひとつが指の都合で速くなったり遅くなったりしてはいけません。4分音符を正確に4つに割った長さ、速さです。休符も同じです。超正確に!出遅れもフライングも許されません。誰か1人でも、これくらいでいいだろうと、正確さの追求を止めてしまったら、全部がぶち壊しになります。これから本番当日まで、正確さを求め続ける訓練を欠かさないで下さい。

特に上行形でディミヌエンドが要求されている場合、大きめに始めた方が効果的です。mpのイメージで実際には豊かな音から急激なディミヌエンドを大袈裟に表現しましょう。2番フルートだけ5連符がありますが、2と3に分けた方がこの場合わかりやすいでしょう。

 

練習番号「B」からは、2拍を5つに割った単位で音の塊が要求されています。これは工夫が必要です。数学的にキチンと割り切って演奏するのは難しいでしょう。2つの楽器群が交互に出て来ますが、パターンは一緒なので、関係楽器全員で手拍子や口で歌ってリズムが身体に染み込むまで訓練してみて下さい。楽器で音を出すのはその後ですね。1拍目と3拍目は他のリズムの楽器とも合わなくてはなりません。要注意!

 

39小節目からハーモニクス(倍音)が出て来ます。H足部管の楽器なら最低音のH(シ)の指使いでこの音を出します。C足部管だとそれは無理なので通常のH(シ)でこの音を出します。もともとこれも倍音です。それとE(ミ)の指使いで5度上のH(シ)を交互に出し、不思議な音の波を作り出します。ビスマスの神秘的な光の色を表現しましょう!